揉める相続① ぐるっと平成31年5月号掲載
ぐるっと平成31年5月号に掲載されたコラムを紹介します。
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「うちは財産がないから、相続なんて自分には関係ないよ」と思っている方、多いのではないでしょうか?
司法統計によると、遺産の額が1000万円以下でもめた割合が33%、1000万円超5000万円以下が42%です。合わせると75%です。
つまり4件の内3件が、遺産5000万円以下で相続争いが起きているということがわかります。また3件に1件は遺産1000万円以下です。
イメージでは何億円も財産がある家庭の相続でもめていると思われている方も多いようですが、実はそれほど多くない遺産の相続でも、もめているようです。
一つ、もめる事例をご紹介します。
父はすでに亡くなっていて、母親、長男、次男というような家族。母親は認知症ぎみで介護が必要で長男夫婦がずっと面倒を見ていました。
なので、母親の財産管理も長男夫婦がやっていました。その後、母親が亡くなりました。そして長男、次男が母親の遺産を相続することになったというケース。
この場合、法律で定められている相続の権利の割合は、相続する人が2人なので2分の1ずつです。
ただ、この事例の場合、母親の面倒を見てきたのは長男夫婦です。
そして実際には長男の奥さんが、義理の母親の介護等で苦労していました。
そうすると、奥さんの気持ちとしては
「私たちがずっとお母さんの面倒見てきたんだから、遺産を多くもらうのが当り前よね。あなた。」
長男「うん、そりゃそうだ。じゃあ次男と話してみる。」
それを受けて、今度は次男の奥さんが
「いや、あなた。法律ではあなたにも2分の1の権利があるんだから、ちゃんと主張してきてよ。」
と言います。そして次男も
「あれ、兄貴。なんか、おふくろの財産少なくなってない?兄貴、使い込んでたんじゃないの」
なんて始まって泥沼の相続争いに発展していきます。
このように相続でもめてしまうと、その後の手続きで様々な不具合が起きてしまいます。
例えば、銀行の預金ですが、母親名義の預金は亡くなった時点で凍結されています。
その口座を解約するためには長男と次男の署名捺印が必要なので、もめていると解約ができません。
もし相続税がかかる場合、長男と次男は自腹で税金を納めなければならなくなります。
また、不動産の名義変更も同じようにできなくなります。
そうすると、ずーっと亡くなった母親名義のままになってしまいます。などなど。
では、どうすればこういった悲惨な「争族」を避けることができるかという「相続対策」については、また次回お伝えしていきます。